午前着速達で
プチプチが無ければ
発泡スチロールの綿でいいし
それすらなければ寄せ集めの古着でいい
さいあく、なんなら新聞紙を丸めたっていい
緩衝材の代わりなんてなんだっていい
すきまに入れるくらい柔らかくて
スグ捨てられたらまあそれでいい
捨てられなくったって
またどこかに送ればいいし
だれかの、みんなの、
何となく無いよりまし
のためにせかせか働いている
そんな自称がいちばん
きもちわるくて吐き気がする
極端に振れないだけの意気地無しの
なめくさったいいわけを
まだまだ口にしては塩っぱくて
ひとりさみしく返る
インテンシブ
ちいさい頃に嬉しかったことの一つ、鏡のなかの自分が、すっかり知らない自分だったとき!
この鼻が、この目が、この輪郭が、この瞬きのしぐさが、この古びたこの鏡の中のこの生き物が、なんたる理由で私といえるのか?
この鏡という装置がそう定義するだけの、か全く別のもののように思えた、一瞬の感覚のはなしである。自己の理想と現実との膨大な差異によるフラストレーションが起因か、はたまた幼少期の曖昧なアイデンティティによる自己定義の誤解か。いまとなっては理由は探せば腐るほどある。
昼間は明るく皆と遊ぶ、アレルギーでかぶれて塞ぐことはあっても単細胞のおかげか輪に入ればはしゃぐ事の好きな、悪くいえば気の使えない子供だった。
だが、家はいつも不穏で不安な感情と環境のごった煮であった。心の中で自分と会話し、自己と他子に関する思考的な隔たりに疑問をかんじてうんうん考え続けるような時間をそれなりに楽しむ状況が日常化し、空想とあそび、夢まぼろしを栄養としていた節がある。
そんなわたしが、鏡にまるで知らない別人が写っている感覚を得ることは、
いちばん身近なじぶんという友人を物質的に他として認証できたというよろこびでもあった。
嘘はここにあるのだろうか。
遠い昔の果てのはなし、自分でも理解の及ばない感覚も思考もある。嘘はここにあるのだろうか。
餡
はやく大人になりたい
そう思い続けている
幼い頃からはやく大人になりたかった
それはなんでも出来るようになるから
その意思は今も変わってない
でも同時に、幼心におもった
女にはなりたくない
身も心も具合が悪そうに思えたから
過ぎていく月日の中で少女が大人になるためには女にならねばならないのだと知った
そういって諦めることさえも大人になるということなのだと
聞き齧りの歴史の枷をひきずっていくことが
大人の使命なのだと
だが、大人になったいまも
はやく大人になりたいと思う
歳を取ってみるだけが芸なのか
大人になることで動かせるようになった様々をわたしは愛しているし、考えてもいる
まだ大人になりたいと思ったとき
わたしが欲しいのは自由なのだとわかった
少女のこころで自由が得られたなら
なんという名の幸福だろうか
体がおんなになってしまっても
少女でいることはできるだろうか
そんな行く果てのないよろこびが
くすぶるこの感触は
わたしの中の少女だろうか
おめでとう祭典
こういうときに体感するメディアのあさましさにいきが苦しくなる、これは夏の湿度のせいなのか、ゆるせないけどどうしようもない。
なんで他国の客席で出来て自国でできないことを讃えるのか、膨らんだ自尊心はくらべることで満たされ、そこに生まれる虚栄の影はわたしたちを飲み込もうとはしていないか。それらをみて手を叩くそのひと影に意志があるといえるのか。
傷つけられたことばかり騒いで傷つけたことを忘れてしまう、傷つけたことで負う傷に囚われて自分の中で終わってしまう、やさしさと脆弱さをはき違えていると泡となって消えてしまう。
すばらしいこの泡沫に
このよの不条理と理不尽から逃げだすようにそとへ出た
しみる雨のおとに共鳴する心の端をたばこで紛らわせようとした
はたと思い出した用事に思い描いたゆくさきを変えて箱とライターを仕舞った
歩を進めることの理不尽と進むことでしかぬぐえない不条理とを
夏のよるが噛みしめているようだった
トコトコ キリキリと歪んだ地面は動いていた
すべての縮図にくやしさがにじむ
これになるなら死んでやるとおもったそのときにはもう遅く
淘汰されるすべてのいきものへ
しけた気温はきれいなことに姿を変えて
餞のように
■
ことばにした時に真実からかえって遠ざかる
さとりと口にしたときにさとりでなくなる
ことばの無いところに生まれた人々が
ことばに濡れて靄がたち 自分のことばにさ迷う
言われることに言うことに
際限はあるか 責任はあるか
誠はあるか そこなにをもとめるか
アンドロイド
春だから
若いから
彼氏がいないから
低気圧がきてるから
花がちってしまうから
未熟だから
道が混んでいるから
もうすぐ休みが終わるから
なにか吐き出しているようで
すり減っていく自分に名前をつけて
ふに落ちたような顔をして
また一年がまわりだすのだ
気を抜くとおいていくぞと
散り際にだれかがささやいた